巻 頭 言
大乗仏教とキリスト教
   
―弁栄上人から空外上人へ―
 
空外記念館理事長
光明修養会上首
東洋大学名誉教授
文学博士
  河 波 定 昌


 1945年、すなわち第二次世界大戦の終わった年の秋、イギリスの有名な歴史家アーノルド・トインビーは、米国の一大学で一連の講義を行い、その結論において20世紀の最大の歴史的出来事が大乗仏教とキリスト教との出会いであったことを論じている。
  奇しくも弁栄上人が光明主義を鮮明に揚げられたのがその二十世紀の初頭であった。往時、仏教のキリスト教への対応はほぼ三通りであった。すなわち(1)キリスト教を邪教として排除(井上円了事にも見られる)。(2)我関せずと無視する。そして(3)はキリスト教と積極的に対応しそれと全面的に交わってゆく立場であった。そして弁栄上人は第三の立場に立ち、キリスト教と積極的に対話され、高次の立場でその同一性すら論じられているのである。すなわち、たとえば阿弥陀仏と天に在ますキリスト教の神とは同体異名である(『無量高寿』)といったようにである。上人にとって宇宙論的な時限からみても、絶対的な神が二つあると云ったことは考えられなかったのである。
 空外上人においても同様であった。『新約聖書』(ヨハネ伝)を引用されつつ、そこで展開される「光」と「生命」と「真理」とはそのままが大乗仏教における「無量光」と「無量寿」と、そして「法」そのものであったのである。

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