山本空外先生は十七歳、旧制松山高校二年の夏、「自己とは」という所謂「人生の帰趣」の解明のために、念仏の一行に生死をかけて取り組まれて、ついに霊性の世界に目覚められました。

東大で哲学を専攻された後、大学教授として、西洋の哲学や思想はもとより、東洋の思想について深く研究された結果、東洋と西洋の思想が結び合うこの上ない教えであると共に、すべての人びとの生き方の光ともなる「無二的人間の形成」の思想を確立されました。

「無二的の二とは、わかりやすく言えば、自分と相手と言えます。その相手が人のときもあり、国のときもあり、物、道具、機械のこともありますが、ともかく相手を生かしきっていくのは、自分の心の深さによるのほかありません。相手を生かしていき、自分のはたらきも実るのを『無二的』というので、反対に相手を自分勝手にして相争い、ともだおれになることは極力いましむべきでしょう」と無二的人間について述べておられます。

もっともすぐれた哲学者として、学問の研究に打ち込まれるとともに、18才から昼も夜も不断念仏によって、無二的人間の生き様を身をもって示され、その尊いお暮らしを敬慕する人たちは、全国に数え切れません。

空外記念館には、空外先生が「無二的人間」を究明なさるお暮らしの中で、自然に蒐まり、求道の心の糧となさった尊い文化資料、美術工芸品、学術文献とともに、弘法大師空海、慈雲尊者、良寛禅師の書と等しく、いのちが躍動する心の書といわれる空外先生の作品を収蔵し、展示いたします。

科学が進歩し、経済が豊かになっても、心の荒廃は進むばかりの今の世に、この記念館において空外先生のみ心に咲いている尊くも美しい花に触れて、入館される人々がそれぞれに、いのちの実りを全うされる無二的な生き方の出発点となりますように念願いたします。

空外先生を敬慕する人々の願いをお聞き届けになって、自ら巨額の浄財を投じて千年の風雪に耐える木造建築をもって設立された空外記念館は、真実の幸福と平和の道を照らす、永遠の灯台であると信じられます。



 
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